らんのものおき

和訳とか、映画の感想とか、舞台の感想とか。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』1981年2月24日付第一原稿 日本語訳

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』第一原稿の、マーティが過去に行くシーンまでを日本語訳しました。現在の映画とは設定が異なる部分が多々あります。

ロバート・ゼメキス、ボブ・ゲイル 作
第一原稿 1981年2月24日 
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【フェードイン】
【宇宙】 
(宇宙船がジョン・ウィリアムズの曲とともにデビルズタワーから宇宙へと飛び立っていく。やがて視聴者は、それが『未知との遭遇』のラストシーンであることに気づく。『未知との遭遇』 のエンドタイトルが流れる。)
(カメラが引いてテレビ画面が映る)
(更にカメラが引くと、ビデオテープの山が見え、『未知との遭遇』の海賊版ビデオが作られて いる。)
【ビデオ製作所、研究所 昼間】 
(海賊版ビデオの製造機を操作しているのは、17歳の少年、マーティ・マクフライ。彼は銀色の ポルシェのジャケットを着て、いかにもイマドキの若者といった感じ。マーティはローリング ストーンの雑誌に載ったギターアンプの広告を見ている。) 
(映画が終わると、マーティはビデオ製造機を切り、ビデオカセットを取り出し、そこに『未知 との遭遇 オリジナル・エディション』と書く。) 
(マーティはビデオを引き出しにしまう。引き出しの中には『スター・ウォーズ エピソード5/ 帝国の逆襲』『スター・クレイジー』『スーパーマン2』などのビデオが見える。)

 (マーティがビデオと教科書をかかえ、別の部屋へ行く。そこは大きな研究所で、机の上は実験 用の機械で溢れかえっている。そこは古くて埃っぽく、50年代の変人科学者の部屋といった感 じである。そこで年老いた男性が一人、研究所の片隅にある機械をいじっている。)
マーティ: ブラウン教授!もう8時半なので、僕そろそろ行きますね。
教授: シーッ! 
(おそらく60代後半ぐらいであろうエメット・ブラウン教授が、ソーラーセルのような装置を 太陽のもとに動かし、日光に当てようとしている。彼はエキセントリックで掴みどころがない が、とても優しく、研究に熱心な人だ。) 
(マーティが教授のところへ近づいていき、彼が研究しているものを見る。その装置は30年ほど昔のものに見える。教授は電池の中に謎の液体を流し込み、その電池についたプラグをメー ターに繋ぐ。すると、パネル上の電球がぼんやりと光り、メーターの針がわずかに動く。) 
教授: 動け!あとほんの24ボルトだ! 
(ブラウン教授がフラスコを投げ捨て、それが壁にぶつかって粉々に砕け散る)
教授: (太陽を指差し) 100万個の水素爆弾の威力が... (装置を指差し) それから24ボルトの電流 があれば... いや、これじゃいかん!私は1949年からずっとこのパワーコンバーターの開発に力を注いできた。それだけの時間があれば、放射能を電気エネルギーに変換させる薬品のひとつも見つかりそうなもんだ!だが、だめだった!33年の月日を犠牲に研究に打ち込んで、得たものは海賊版ビデオの製造機だけだ!
マーティ: それで思い出した!もっとビデオを作って35mmフィルムの店を経営できるくらいになれば、供給会社の映写技師と手を結べるかもしれません。そうすれば、公開前の映画だって ビデオにして売ることができるんですよ!
教授: 35mmフィルムの店か...。それなら私も手伝おう。 (教授がパワーコンバーターを見ながら考え込む)

 (マーティが教授のもとから離れ、別のドアの前に立つ。そのドアには5つもの鍵が掛かってい る。マーティがドアを開けようとするが、当然開かない。)
教授: そんなに中が見たいかね?マーティ。 
(教授が後ろを向いたままマーティに問いかける。マーティは笑みを浮かべる。)
マーティ: (笑みを浮かべながら)いつか教授がこのドアの鍵をかけ忘れたら、絶対中を見てやりますよ。
教授: 幾つかのドアには訳あって鍵がかかっている、そう考えたことはないかね?
マーティ: いいえ。その訳を知るにはドアを開くのを待つしかないですね。放課後に会いましょ う。
教授: ちょっと待て、マーティ。今何時だ?
マーティ: 8時半です。
教授: 午前か?午後か?
マーティ: 午前ですよ、教授。太陽が昇ってるじゃないですか 教授: あぁ、そうだったか。
マーティ: もう、部屋中時計だらけなのに全く時間の感覚がないんですから。 
(ブラウン教授の部屋は時計で溢れている)
教授: たしかに私には時間の感覚はないかもしれんが、時間そのものに関しての知識は誰にも負 けんよ。
(ブラウン教授が話しながらマーティのもとに歩いてくる)
教授: 時間というのは、それ自体が独自の次元を持っており、それはコントロールされた...... 
(教授の話にうんざりしたマーティが階段へ向かう)
マーティ: また後で会いましょう。
(マーティが出ていく)
教授: ついに旅立ちの時だな......
(教授がドアを開けて別の部屋に入っていく)

 【鍵のかかった部屋】 
(部屋の中には40年代か50年代のものとみられる妙な機器が置かれている。その端には幾つか のレンズが取り付けられており、そこからビームのようなものが出るのではないかと予想され る)
(教授が自分の発明品を見ながら)
教授: あとは動力だけあれば......。

【マーティと階段】
(マーティが階段を降りて通りへ繋がるドアを開ける)

【オペラ劇場の建物 昼間】 
(マーティが廃墟になったオペラ劇場から外へ出る。その劇場の3階がさっきの研究所である。) 
(その劇場はすでに廃墟になっており、外には"ASSEMBLY OF CHRIST"という文字が張り出さ れている)
(周辺の建物も劇場同様に廃れており、かつては賑わっていたであろう面影が残る) 
(その先の小道には"N.R.C."と書かれた黒いバンが停めてあり、2人の男がマーティを気にも留 めず排水をチューブに流し込んでいる) 
(マーティはその通りで唯一商売が続いている"ウィルソンズ・カフェ"に入る)

【ウィルソンズ・カフェ】 
(マーティがカフェに入る。カウンターには35歳の店主、ディック・ウィルソンが立っている。 彼は太っていて、キャンディーバーを食べている)
マーティ: おはよう、ディックさん 
ディック: やあマーティ。今日は何にする?
 マーティ: チリとフライと、それからタブを頼むよ 
(マーティが雑誌のスポーツページに目をやっていると、ディックがタブを持ってくる) 
ディック: ロバー・ビスケットがアーリントンで第3レースに出場、か。
マーティ: ディックさん、あの外の排水にいる男達は?
ディック:(肩をすくめ) 今週に入ってもう3度目だ
(マーティが彼らを見やる)
マーティ: N.R.Cってなんなんだい?
ディック: さあな。国際キャッシュ・レジスター(National Cash Register)かなんかの略か?

【科学の教科書】 
(「1952年3月18日、ネバダ州、アトキンス。最新の地上核実験」という説明文がついたキノ コ雲の写真。その雲の部分に「M・M +S・P」と落書きをする手。その手は、そこにハート型 の矢を描き、「土曜日にダンスに行かない?きっと"吹っ飛んじゃう"くらい楽しいよ」と続ける。)

【科学の授業】 
(先ほどの落書きをしていたのはマーティ・マクフライの手。マーティは授業に全く集中してい ない。講義をしているのは55歳のアーキー先生で、彼はとても機嫌が悪そうだ。) 
アーキー先生: アメリカでの地上核実験は合計でたった3回しか行われていない。政府はその全てにおいて放射能の影響を調査したんだ。実験においては、家にテレビに冷蔵庫、その他にも一般家庭にあるような物は全部設置された。科学者達はそれによって原子爆弾が町に及ぼす影響を調査しようとしたんだ。それから、町の住人もマネキンで再現し......

 (マーティは先ほどのページを教科書から破くと、斜め後ろの席に座った可愛い女性、スー ジー・パーカーにウインクをする。2人は笑いあい、マーティは彼女に破ったページを投げ渡す)
アーキー先生: しかし、実験から30年経って分かっていることは、核エネルギーの破壊力は今までにないほど強力だということだ。核が持つ破壊力について、君達も一度は考えたことがあるだろう。何か質問や意見のある者は?誰かいるか? 
(生徒からはなんの反応もなく、誰も手を挙げず、興味すら示さない)
アーキー先生: 地球全体を破壊する威力の話をしてるんだぞ?何も言うことがないってことはな いだろう。
(誰も何も言わない)
(先生はイライラし始める)
アーキー先生: ジャクソン君、君はどうだね?何か意見はないのか? 
(ジャクソンは何も言わない) 
(スージーがマーティに貰った教科書の切れ端に何かを書くと、それを折りたたんでマーティに 投げ返す。それがマーティの近くの床に落ちる。マーティが拾う)
アーキー先生: ゴメス君、何か意見は?パーカーさん?クランプ君?何かないかね? 
(マーティが紙を開く)

【教科書の切れ端】 
(キノコ雲の横には「それサイコー」と書かれており、その裏面には「もちろんよ」と書かれて いる)

【再び授業風景】
(マーティが微笑む)
アーキー先生: 君はどうだね?マクフライ君。 
(マーティは切れ端を畳んで急いでポケットにしまう)

 マーティ: えっと、僕の意見はですね、その、面白かったです。
アーキー先生: 核で町が破壊されるのが面白かったって?
マーティ: いや、破壊されるのがじゃなくて.....
アーキー先生: (他の生徒達に向かって) マクフライ君は核で町が破壊されるのが面白いんだそう だ!
マーティ: いや、そんなこと言ってませんよ!
アーキー先生: (マーティの話を聞かずに) その態度が気に食わん、マクフライ!お前は「面白いから100メガトンの核爆弾を爆発させてみよう」なんて言いかねんからな。
マーティ: (怒りながら、先生に聞こえない小さな声で) ああ、あんたのケツの中で爆発させたら面白いだろうよ。
アーキー先生: だが残念ながら、このまま行くと君達は本当に地球が破壊されるのを見ることになるかもしれん。そうじゃなくとも、天然資源の枯渇は今大きな問題だ。それから君達が今吸っている空気、それに川や湖の汚染だって無視できない。将来的には石油だって使い果たしてしまうだろう。いや、それだけじゃない、私達が持つ全てのエネルギー資源が危機に瀕して いる。そんなことがこの先いくらでも起こりうるんだ。どうだ、"面白い"かね?
マーティ: ああ、アーキー先生、もうやめてくださいよ!僕まだ17歳なんだから!そんな問題 背負いこめるわけないじゃないですか!
(先生が真面目になってため息をつく)
アーキー先生: もちろんそんな必要はない。その問題自体においてはな。だがその解決策は君達自身も考えなければならん。
(授業終了のベルが鳴り、生徒達が出口へ向かう)
アーキー先生: ではまた明日。

【高校】
 (生徒達が校舎から出てくる。そこはごく普通の高校で、煉瓦の壁の横にはカシの木が立ってい る。壁には幾つかの落書きがあり、板が張られている窓が1、2つある) 
(学校が終わった生徒達は、いつものようにタバコを吸ったり、飲酒をしたり、ぶらぶらしたり、 男は女を、女は男を追いかけたり、車を見せびらかしたりしている) 
(マーティは子供達の輪の中に入り、こっそりとビデオを売っている。ラルフ・ニュートンがマー ティに近づく)
ニュートン: よう、マーティ。週末まで50ドル貸してくれよ、いいだろ?最後の20ドルを使っ ちまったんだ。
マーティ: 無理だって。新しいアンプを買うために貯金してるんだ。
ニュートン: いいじゃないか、お前がロックスターになった時のために貸しを作っとくと思って さ。
マーティ: 勘弁してくれよ!(時計を見る) 僕もう行かなきゃ。
(マーティの隣にいるのは彼の友人ドナルドソン)
ドナルドソン: なあ、いつものは時計どうしたんだ?
マーティ: 修理中なんだ。だからこのアンティークがそれまでの代わりってわけ。このからくり見てみろよ。 (マーティがからくりのついた金の腕時計を見せる。マーティは札束をポケットに突っ込む。ドナルドソンが階段を降りる)
ドナルドソン: なあ、一緒に来ないか?一杯やろうぜ?
マーティ: また明日な。ビデオ売んなきゃ。
ドナルドソン: なあ、そういや、俺の兄貴が来週結婚するんだ。それで今度パーティをやるんだ けど、お前、何かパフォーマンスできないか?
マーティ: ああ、今日の午後なんとかするよ。

 【研究室とマーティ 昼間】 
(深い興奮気味な喘ぎ声と、ポルノ映画のサウンドエフェクトが聞こえる。マーティは手を震わせながらそれを見ている)(その映画の画面はカメラには映らない)
(マーティがテレビの音量を下げる。彼はポルノ映画のコピー版を作っているのだ) 
(マーティはベンチの上にあるタバコの箱に札束を詰めると、研究室の別の部屋へと行く)

【研究室、ブラウン教授の住居スペース】 
(ブラウン教授がブランケットに包まれながら簡易ベッドで寝ている。その横には古い冷蔵庫と ホットプレートがあり、剥き出しのパイプには衣服が掛かっている。マーティは冷蔵庫を開けると、コーラを取り出す。マーティは不注意でオレンジを落としてし まい、それはベッドの下へと転がっていく) 
(マーティはベッドの下にかがみ、オレンジを取ろうとする。マーティがブランケットをどけると、そこにあった物を見て驚く)
(そこにあるのは一つの箱) 
(その箱には紫の放射能マークがついており、「危険!放射性プルトニウム!関係者以外使用禁止!扱う際は必ず防護服を着用してください!」と書かれている。その下には「カリフォルニア州 サン・オノフル / サン・オノフル原子力発電所 所有物」と書かれており、その横にオレンジが転がっている) 
(マーティは深く深呼吸をする。マーティは足でそのオレンジを箱から遠ざけると、慎重にベッ ドから離れてオレンジをゴミ箱に入れる。ブラウン教授はまだぐっすり寝ている) 
(マーティはコーラの蓋を開けて一口飲むと、猿(手回しオルガンを演奏しているような小さい 猿)が入っているケージへと向かう)
マーティ: やあ、シェンプ。調子はどう?

 (シェンプは赤のコートを着、帽子を被っている。マーティがケージを開けると、シェンプは マーティの肩に登る) 
(マーティはパワーコンバーターがあるところへと向かう。その近くには古い青写真が沢山ある。マーティがそれに目をやる)
(青写真) 
(青写真の一番上には「電光化学パワーコンバーター」と書かれた写真があり、その写真はベン チの上にある発明品と同じ物だ。その他にも「15チューブ自動執事ロボ」というロボットや、 「飛行モービル」という空飛ぶ車、それに「全自動ペン」というワイヤーのような物がついた ペンなどの写真がある) 
(マーティはパワーコンバーターを調べ始める。午後の日差しが写真の上に降り注いでいる。化学薬品が入っている仕切りからじょうごが飛び出ている。マーティは興味本位でその中にコー ラを注ぐ。すると、いきなり別の機械から火の粉が飛び散り、マーティは驚いて飛び上がる) 
(ブラウン教授が跳び起きると、辺りを見回し、パワーコンバーターのもとへ行く)
ブラウン教授: 何があったんだ!?
マーティ: その、よく分かんないんですが、間違ってコーラをこぼしちゃって。落としちゃった んです。
(ブラウン教授がボルトメーターと電球を見る)
ブラウン教授: 貸したまえ! 
(ブラウン教授はマーティのコーラを少しだけじょうごの中に注ぎ込む。すると、電球が光り、 ボルトメーターの針は跳び上がり、機械全体が音を立て始める) 
(ブラウン教授がさらにコーラを注ぐ。電球がさらに激しく光りだし、破裂する。ボルトメー ターの針は振り切れ、パワーコンバーターは激しく揺れてベンチに倒れる) 
(ブラウン教授は信じられないといった様子で両手を震わせている。それはまるで部屋の中をイエス・キリストが歩いているのを見たような驚きである。彼はボトルの構成成分表を見る)

 ブラウン教授: 何が入ってるんだ?
マーティ: さあね、コーラ作り方なんて誰も知りませんよ。世界最大の謎ですから。
(ブラウン教授は考えごとをしながら、パワーコンバーターを立て直して鍵のかかった部屋へと 向かう。彼は鍵を外し始めると、マーティを見て言う)
ブラウン教授: また明日会おう 
(ブラウン教授はパワーコンバーターとともに部屋の中に入ると、また内側から鍵をかける)

【マーティの寝室 夜】 
(マーティはヘッドホンをつけて、ステレオから流れるレコードの音楽と共にギターを弾いている。彼の寝室の壁にはロックスターのポスターがいくつか掛かっている。その部屋には、もう ここには住んでいない彼の兄のベッドと家具も置いてある) 
(マーティはギターを弾きながら部屋の中を歩きまわると、ギターのネックを使って机やタンス の上にある雑誌をどかし始める。彼は何かを探している。『ローリングストーン』をどかす と、そこには幾つかの工具が、さらに『ヘビー・メタル』と『ランプーン』をどかすと、そこ には宿題の束がある) 
(レコードが終わると、マーティとヘッドホンを外し、ドアの外に向かって叫ぶ)
マーティ: ドリル盗んだの誰!?
(女性の声が答える)
女性(画面には映らない): 夕飯の時間よ!

マクフライ家 夜】 
(マーティは階段を降りてリビングへ行く。家の家具は使い古されている。47歳のジョージ・マ クフライはテレビでボクシングの試合に夢中である。彼は禿げていて、平凡で、人生に退屈している人間だ)

 マーティ: 誰かドリル見なかった? 
(父からの反応はない。47歳の母・エレンはキッチンから顔を覗かせている。彼女はかつては 美人だったが、今はおばさんである)
エレン: 5分も呼んでたのよ!聞こえなかったの?
マーティ: 練習してたんだ。来週オーディションがあるからさ、練習しなきゃ。ちゃんと練習し なきゃスターになれないだろ?
エレン: ご飯も食べないでどうやってスターになるのよ
(エレンがキッチンに戻っていく)
マーティ: パパ、ドリル見なかった?
ジョージ: なんの?
マーティ: あのドリルだよ!クリスマスにパパに買ってあげた電動ドリル。昨日の夜使ってたん だけど。
ジョージ: すぐ見つかるさ
(エレンがテーブルに夕飯を置き、マーティが席に着く)
エレン: ジョージ、夕飯よ!
ジョージ: 今行くよ
(ジョージは座ったままボクシングの試合を見ている)
エレン: ジョージ!夕飯の時間だって言ってるでしょ!
ジョージ: 分かったよ今行くって 
(テレビがCMに入り、ジョージはテレビを食卓からでも見える向きに移動させる)
エレン: (マーティに向かって)学校はどうだった?
マーティ: まあまあ
エレン: 何か学んだ?
マーティ: うん
エレン: それは良かったわ

 (ジョージが席に着く)
ジョージ:(マーティに向かって)学校はどうだった?
マーティ: まあまあ
ジョージ: 何か学んだか?
マーティ: うん
ジョージ: そりゃ良かった
(ジョージがまたテレビに夢中になる)
(マーティが新聞をに目をやる)
(エレンが宙を見つめる)
(20秒間の沈黙。テレビからはボクシングの実況が聞こえる)
(エレンがついに口を開く)
エレン: ところで、思い出したんだけど、土曜の夜はステラおばあちゃんと中華料理を食べに行 くわよ
ジョージ: エレン、また中華かい?
エレン: ジョージ、 そんなに中華が嫌なら自分でどっか良い店探して予約してよね
マーティ: ってことはパパが電話しなきゃだね
ジョージ: そんな。分かった中華でいいよ。
マーティ: 土曜の夜は『パリのスプリングタイム・パーティー』なんだ。スージー・パーカーと 一緒に行くんだ
エレン: 『パリのスプリングタイム・パーティー』ですって。聞いた?ジョージ。あのパーティーまだ続いてるのね。
エレン:(マーティに向かって) あれは私達の初めてのデートだったわ。ジョージ、覚えてる?あの夜のことはすべて覚えてるわ。初めてキスした時のこと覚えてる?最後の曲を踊ってる最中で、エディ・フィッシャーの"Turn Back the Hands of Time"が流れてたの。私、あなたに誘われたときのことも全部覚えてるわ。あれはカフェテリアだった。あなたったらすごく緊張し ちゃって、コーンスープをこぼしちゃったのよね。 
(ジョージはテレビを見ていて、エレンの話は聞いていない)
マーティ: 僕、日曜の朝は家にいないかもしれないよ。スージーと湖に日の出を見に行くんだ。  
エレン: 日の出?なんのために?
マーティ: 見るためにさ
(ジョージは話がつかめず、またテレビに夢中になる)
エレン: それって、一晩泊まるってこと?
マーティ: だってそうしなきゃ日の出が見れないだろ?
エレン: 女の子と一晩一緒に過ごすなんて信じられないわ
マーティ: ママ、そんな堅いこと言わないでよ 
(裏口のドアを叩く音が聞こえるが、誰も出ようとしない。もう一度ドアを叩く音がする) 
エレン: ジョージ、出てくれない?
(ジョージは聞いていない。マーティが玄関に行く)

【裏口のドア】 
(マーティがドアを開けると、そこには47歳のビフ・タネンがいる。ビフは相手を脅すような大 きい声をしており、警備員の制服を着た腹はとび出ている。彼のネクタイはほどけ、シャツは ズボンからはみ出ており、明らかに仕事帰りである。彼の制服の肩には“特別警備員”と書かれ たパッチが付いている)
(マーティはビフを見ると不機嫌になったが、様子は変えない)
ビフ: おや、マクフライの不良一家じゃねえか
マーティ: なんか用?ビフ
ビフ: 少しは気を遣えよ、このアホ。俺は特別警備員なんだからな。

 マーティ: それがどうしたって言うんだよ。ゴルフ場であんたに気を遣ってるやつなんか見たこ とないけど。きっと皆んなあんたの仕事がどれだけ大変か分かってないんじゃないのか? 
ビフ: いいかよく聞け。アホみたいな面しやがって。俺はな.....
マーティ: なんの用なんだよ、ビフ
ビフ: オヤジさんはどこだ? 
(マーティがキッチンを指差す。ビフは壊れた電動ドリルと幾つかの工具を取り出す)

【キッチン】
(ビフがジョージに近づく)
ビフ: おい、マクフライ。なんて安モン貸してくれてんだよ。使った途端に丸焦げだ。もうちょっとでエンジンブロックがダメになるところだったんだぞ
(マーティが頭を振る)
ジョージ: ああ、ビフ。これは木工用なんだ、ほらここにそう書いてあるだろ?エンジンブロックになんか使っちゃダメだよ
ビフ: いいか、マクフライ。俺はこういう工具に関してはよく知ってんだ。こいつは使いもんに ならねえ安モンだ。エンジンがダメにならなかっただけ良かったさ。次にこういうモンを買う 時は必ず俺にひとこと言うんだな。工具の見分け方ってのを教えてやるからよ。
(ビフがジョージにドリルを渡す)
ビフ: おっと、それからもう一つ。俺ん家のガキがガールスカウトのクッキー売ってんだ。お前は4箱は買うだろうって言っておいたからな。俺を嘘つきにするんじゃねえぞ。
(ビフが去ると、ジョージは怯えながらうなずく。ジョージはマーティとエレンの方を向く) 
ジョージ: あいつどう思う?木工用ドリルをエンジンに使うなんてさ 
(マーティは怒って席を立つと、そのままリビングから去る)
エレン: どこ行くのよ

 (マーティは答える代わりにドアを思いっきり閉める)

マクフライ家 マーティ 夜】 
(マーティは銀色のポルシェのジャケットを着ると、玄関前の芝生を踏みつけながら歩いていく。彼は777と書かれた古い郵便ポストを殴り、ついで家族の車を蹴る)

【住宅街 夜】 
(マーティがスージー・パーカーと歩いている。マーティは怒りながら喋っていたが、落ち着き を取り戻す)
マーティ: パパったらいつも人の言いなりになってばっかりでさ。あんなにこき使われてるのに 何も言い返さないんだ。まったく人にされるがままだよ。
スージー: きっと自信がないのよ。少なくともあなたは父さんとは違うじゃない
マーティ: ああ、もう!あんなんでなんでママと結婚できたのか不思議でしょうがないよ。 
(しばらく無言で歩く2人)
スージー: お父さんとお母さんが一緒に寝てるところ想像できる?
マーティ: まさか!
スージー: 私もよ。うちの両親が結婚するまえ一緒に寝たことがあるのかってずっと不思議に思ってるわ。あなたのお父さんとお母さんは?どう思う?
マーティ: ありえないよ!うちのママがセックスだなんて。その言葉を聞いただけで発狂しそうな人なのに。僕達が土曜の夜一緒に泊まるって言ったときのママの顔、君にも見せてやりたい よ。いつだって何かやましいことがあるんじゃないかって心配してるんだから。
スージー: (ふざけながら色っぽく)でも土曜の夜は何かがあるんじゃない?
(マーティが答える前に、マーティの足にスケートボードがぶつかってくる。2人の子供がでこぼこ道を走っている。負けた方の子供が立ち上がる)

 (マーティはスケボーに乗ると、子供のいる方へ向かう。マーティは子供にスケボーの技を披露せずにはいられず、スケボーに乗って障害物を軽々と乗り越え始める。最後の障害物を乗り越 えると着地をきめてスケボーから降り、ついでスケボーを蹴り上げ、それをキャッチする。 マーティが子供にスケボーを返す)
子供: わあ!上手いんだね! 
(マーティはスージーに向かってにこっと笑うと、彼女のもとに戻る。スージーはとても感心している)
マーティ: 自転車に乗るようなもんさ、簡単だよ。 
(2人は家の前に来る。スージーがその家を見て、ついでマーティを見る。そこはスージーの家である)
スージー: ああ、着いたわ。
(2人はしばらく見つめあう)
マーティ: ありがと
(マーティはスージーにキスをする)
スージー: またね
(スージーが家の中に入る。マーティは彼女を見送ると、1人で考えに耽りながら道を歩き続け る。マーティが歩いていると、黒いセダンが彼の前に現れて通り過ぎていく。その車は屋根の 怪しげな装置をつけている。その車は道の先でUターンし、マーティの背後に来る) 
(車のヘッドライトがマーティに当たり、彼はそれに気づく。マーティは車を見ると、道の端に 寄る。車がマーティのそばに停まり、2人は捜査官風の男が出てくる。車にはN.R.C.という文字が書かれている)
リース: こんばんは。私はリース、こちらはフォーレー。原子力取締委員会(Nuclear Regulatory Commission)のエージェントだ
(リースが身分証を見せる)

 リース: ちょっとここに立ってもらってもいいかな? (マーティは警戒しながらも従う)
マーティ: どうかしたんですか?
フォーレー: 放射能チェックの巡回中でね
(フォーレーは放射能測定器を取り出し、マーティを検査し始める。マーティの足を検査するま では何も起こらなかったが、マーティがあのプルトニウムの近くに立っていた足を検査する と、機械は反応を示す。リースとフォーレーは目を合わせる)
リース: 身分証は持ってるかね?
(マーティはためらいがちにリースに財布を渡す)
マーティ: 待ってください、僕から放射能かなんかが出たんですか? 
フォーレー: そこまで危険なレベルじゃないから大丈夫だ
リース: マーティン、最近X線検査を受けたことは?
フォーレー: もしくは発光塗料に触ったとか
マーティ: いえ....
リース: 過去12時間以内にどこか変わった場所に行ったりしましたか? 
マーティ: いえ、家と学校とここだけです
フォーレー: 今日、2980のモンロー通り付近に行きました?
マーティ: どこのことです?
リース: 古いオペラ劇場のところさ
(マーティは少しためらう)
マーティ: いえ
(リースがマーティに財布を返す)
リース: わかったよ、マーティン。それじゃ、気をつけて帰るんだぞ 
マーティ: ああ、はい

 (リースとフォーレーは車に戻り走り去っていく。マーティは少しのあいだ考え、それから勢いよく走りだす)

【オペラ劇場 夜】 
(マーティはオペラ劇場に向かって通りを走っている。通りには、彼以外には道端に捨てられた 新聞くらいしかない。マーティは上の階に繋がるドアを開けようとするが、鍵がかかっていて 開かない。マーティはうしろに下がって上の階に目をやる) 
(すると突然、3階のドアが凄まじい爆発とともに吹き飛ぶ)
マーティ: 大変だ! 
(マーティは再びドアを開けようとする。それでも開かないため、彼は仕方なく窓を割って中に 入る) 
(マーティは研究所に繋がる階段を急いで上がる。部屋のドアにかかっていた鍵は外れており、 ドアの下から光が漏れている)
(マーティは急いでドアを開けて中に入る)

【鍵の"かかっていない"部屋】 
(教授が手作りの原子炉の横に立っている。それは古い暖房炉や湯沸かし器、ボイラー室の部品 などでできている。教授は片方の手にロープを持ち、ダイヤルとメーターを調節している) 
(猿のシェンプはその発明品についたレンズの先にある椅子の上に静かに座っている。シェンプ はいつものオルガン弾きのような服を着て、首にはデジタル時計がついている)
マーティ: 教授!
(教授はマーティを見て驚くが、作業を続ける)
教授: シールドの外に下がってろ!

 (教授は部屋の端にあるシールドを指さす)
マーティ: でも教授....
教授: いいから下がってろ!今から放射能を放つ
(マーティは急いでシールドの外に出る)
(教授がロープを少し引っ張る) 
(するとパワーコンバーターが動きだす。真空管からの低いうなり声のような音はさらに激しく なり、さらに静電気のパチパチという音とともに頻度を増していく) 
(シェンプは周りの音に興味津々で辺りを見まわしている。音はさらに大きくなり、緊張感が高 まる。そして時計がちょうど9時を指したとき、ブラウン教授はロープを放す。すると、高い音 とともに目の眩む赤いスポットライトのような光線が発射され、それがシェンプに当たる) 
(シェンプの姿が消える。シェンプが座っていた椅子の上半分も彼とともに消えてなくなってお り、光線の当たらなかった下半分の脚の部分だけがよろけながら床に残っている) 
(シェンプが消えたことでできた空間を埋めるように、風が研究室内を走りぬけていく) 
(機械の音は静まり、マーティ・マクフライは仰天してシールドの中に入ってくる)
マーティ: こりゃすごい!でもシェンプが消滅しちゃった! 
(ブラウン教授は頭を振り、笑みを浮かべる)
教授: いや、マーティ。シェンプは別な次元に無事に無傷で存在しとるんだ。
マーティ: じゃあ今どこにいるんですか! 
教授:いやそれを言うならばだ、どの時代に?と言ってくれ。わかるか、シェンプは世界最初のタイムトラベラーになったというわけだ。私はシェンプを未来に送ったのだ!未来と言っても 僅か2分先だがな。
マーティ: 未来?どういうこと?シェンプはどこにいるんですか!
教授: シェンプはこの部屋の中にいるんだよ、今から2分後の未来にな。正確に言うと、9時02 分にあいつはここに戻ってくるはずだ。

 マーティ: ちょっと、ねえ待ってくださいよ教授。それじゃあ、その、これってつまり、その..... 
教授: タイムマシンさ
(マーティは状況を理解しきれず腰を落とす)
教授: 成功するってことはずっと分かっていたんだ。33年前にこれを思いついたときからずっとな。だがそれに必要な動力がなかなか手に入らなかった。動力がなきゃどうにもならん。物質を光の速度まで加速させるのに十分なエネルギーが必要だったんだよ。だがそれがどうにも 見つからなかった、今日の午後まではな。
マーティ: あのコーラのことですか? 
教授: その通りだ
(教授はツアーガイドのような身振りでマシンの説明をし始める)
教授: このパワーコンバーターだが、これはコカ・コーラでできた化学薬品のおかげで今は最大能率で動いている。化学薬品のエネルギーは次元転移装置へと流れていき、それが1ミリ秒ごとに何ジゴワットかの電流を発する。その電流が、君がたった今見たような光線に変換されタ イムトラベルを引き起こすってわけさ。私がこのロープを放すと、その一連の流れが一気に引き起こされる。
マーティ: パワーコンバーターってのは太陽光で動くものだと思ってたけど、太陽がなくても大丈夫なんですね
教授: まあ、もし太陽からたった1マイルの距離にコンバーターを置けるなら太陽光でも問題な いがな。私が考えた方法ならもっと簡単に同じくらいの電力を得ることができるんだ。(ロープ を指し示しながら) 金属の棒が高く上がれば上がるほど、プルトニウムから強力なエネルギー が放たれる。それで物質が時を超えられるってわけさ。
マーティ: プルトニウムだ!それで用があって来たんですよ!教授、そんなのどこで手に入れた んですか?

 教授: なぜだ?
マーティ: さっき道で政府のエージェントみたいな人に止められて放射能検査をされたんですよ!きっとあいつらそのプルトニウムを探してるんだ! (教授は研究室のデジタル時計を見る。時計は9時01分50秒を指している)
教授: あと10秒だ!
(教授はシェンプが消えた場所へと急ぐ。マーティがあとに続く)
教授: 気を引き締めろ、急に現れるからな。
(時計が動いている。9時01分55秒... 56秒... 57秒... 58秒... 59...) (いきなりシェンプが現れる。椅子の上半分も現れ、よろけて倒れる。びっくりした猿は近くに あった機材の山の上に飛び移る)
マーティ: シェンプ! (ブラウン教授はシェンプを抱きかかえ、怪我がないのを確認すると、シェンプの首についた時 計を見る。シェンプの時計は9時00分10秒を指しており、研究室の時計は9時02分10秒を指し ている)
教授: きっかり2分遅れてちゃんと動いてるぞ!
マーティ: シェンプは大丈夫なんですか?
教授: もちろんだとも。あいつには凄いことが起きたという認識はない、あの椅子がいきなり倒れた以外はな。私達はシェンプに追いつくのに2分待たなきゃならんかったが、やつにとっては一瞬のことさ。
(マーティは教授の考えを探るように彼の顔を見る)
マーティ: 教授、つまり、これがあればシェンプを過去にも送れるってこと?
機械: 極性を逆向きにすればできるとも、理論上はな。 (ブラウン教授は"+"の向きになっているタイムマシンのスイッチを指し示す) 
マーティ:(興奮しながら)こりゃすごい!教授、これがあれば大金持ちじゃないですか!
教授: 大金持ち?

 マーティ: そうですよ!つまり、今日の新聞に載ってるレースの結果を過去に持っていけば..... 
(マーティは捨ててあった新聞からスポーツの記事を見つける)
マーティ: ほら、これと一緒にシェンプを過去に送れば、レースの結果が分かるんです。それで 勝つ方に賭ければ、僕達は億万長者ですよ!
教授: マーティ、そんなことしたら別の次元が生まれてしまう
マーティ: それがなんです?
教授: 分からないのか?もし過去にタイムスリップなんてしたら今までの歴史が変わってしまう んだぞ。私はそんな責任負いたくないね。
マーティ: せっかく大儲けのチャンスなのにもったいないなぁ
教授: 行くのは未来だけだ、マーティ。このマシンはそのために作ったんだからな。今からシェンプを24時間後に送る。もし良かった手伝ってくれ。
マーティ: ああ
(教授はマシンがある部屋から研究室へと出て行く。マーティは教授がいなくなったのを見計らい、新聞のレースの結果を破り取り、今日の日付に丸をつけ、シェンプのポケットへ忍ばせ る。さらに教授が見ていないのを確認し、マシンのスイッチを"-"に入れる)

【研究室】 
(ブラウン教授は窓際の机で何かを探している。教授はマイクロカセットレコーダーを見つける と、急いでマシンがある部屋に戻っていく)

【マシンがある部屋】 
(教授は部屋に内側から鍵をかけると、カセットレコーダーをマーティに渡す)
教授: これを持ってそこのパネルに立ってくれ。そこで放射線量を読み上げてくれ。ここであっ たことを全部記録しておきたいからな。85ラドに達したら教えてくれ。

 (マーティは言われた通りパネルのそばに立つ) 
(ブラウン教授は再び椅子をセットし、シェンプを座らせる)
教授: おいでシェンプ。大丈夫痛くないから。 
(教授は原子炉のそばに立つ。シェンプはマーティと教授の間に座っている。教授はスイッチが 切り替えられたことには気づいていない)
教授: 準備完了だ 
(教授がスイッチを幾つか入れると、マシンが唸りだす。教授はロープを慎重に引く。マーティ はメーターの数値をレコーダーに向かって読み上げはじめる)
マーティ: 放射線量、10ラド、数値は安定しています。43.16ラド。只今の数値、44.37ラド。 46.51ラド。46.73ラド。47...
(突然、N.R.C.のエージェントのリースとフォーレーよってドアが蹴り破られる。彼らの他には 警察と他のエージェントもいる。彼らは拳銃を持って部屋の中に入ってくる。数値は38に達し ている)
リース: 全員手を上げろ!
教授: 来るな!
フォーレー: なんてこった!原子炉だ!
(リースは教授に銃を向ける)
リース: (ブラウン教授に向かって)お前!止めろ!今すぐにだ!
教授: そんな!出て行ってくれ!実験の途中なんだ! 
(ブラウン教授は原子炉から離れようとはせず、ロープをさらに強く引っ張る) 
(フォーレーがブラウン教授を撃つ) 
(その音に驚いたシェンプは椅子から飛び降りる)

 (ブラウン教授は胸に弾丸をくらうが、まだよろめきながらロープを握っている。教授は倒れる と、ロープをできるだけ遠くへ引っ張る)
マーティ: 教授! (メーターを見る) 大変だ!ロープを放して!もう4200ラドだ!
リース: (マーティの言葉が聞こえなかった)なんだって??
マーティ: ロープを放して!!
(機械の大きな音で彼らの会話は全く聞こえない。マーティが教授のもとに走っていく。しかし、フォーレーはすぐにマーティに銃を向ける)
フォーレー: 動くな!! (マーティが止まる。マーティはちょうどレンズの真下に立っている。マーティが手を上げる) 
(教授は床に横たわっているが、まだロープを握っている。教授の手から力が抜け、ロープが放 たれる)
(光線がマーティを直撃し、白く光る)
(リースとフォーレーが驚く)
(マーティが上を見上げる) 
(カメラがマーティ視点に切り替わる)
(白い光が止むと、すべてが真っ暗で静かになる) 
マーティ: (声のみ) 教授?どこにいるんですか? 
(マーティはマッチで辺りを照らして見回すと、自分が物置きにいることに気がつく)

【物置き、マーティ、夜】 
(マーティは注意深く辺りを見回しながら歩いていくと、古い椅子に躓きそうになる。その部屋 にはいくつかの汚れた家具と木枠がある。マーティはもう一本マッチを擦り、ドアへ近づいて いく。それはさっきまでタイムマシンがあった部屋のドアを同じ位置にある。マーティはドア を開けようとするが、開かない)
マーティ: くそ!

 (マーティは窓に近づき、窓を開けると、車の音が静かに聞こえる。マーティは窓から外に出る。)

【オペラ劇場の裏、夜】 
(マーティは三階の窓から外へ出ると、非常階段から下へと降っていく。マーティが地面に降り立つと、ヘッドライトが彼を照らし、大きなトラックがマーティ目掛けて猛スピードで走ってくる。マーティは壁に身体を押し付けるようにしてよけると、トラックはギリギリでマーティをかわして走り去って行く。)
(マーティはほっと一息つく。)